共通道具
はじめて生徒さんに「トースカン」と言うと、「トースカン?」となってしまいます。そんななじみのないトースカンについて、今日は説明していきます。
トースカンとは?
木彫など加工物に水平線を引くための道具です。
トースカンの構造
ネジ(A)を緩めると、上下、左右に動かすことができます。
また、ネジ(B)を緩めると、ペンの角度を変えることができます。
このような構造により、ペンを上下、左右に移動したり、角度変えたりすることで正確な水平線を引くことができます。
使い方
加工物にトースカンのペンを押し当てながら、動かすことで加工物に線を引くことができます。
使い道
使い方1.定規と同じ高さの線を引く
垂直に立った定規を利用すると、目盛りと同じ高さの線を引くことができます。
使い方2.中心線を引く
平行な面が残っていると加工物であっても中心線を引くことができます。
下の写真にある左右の面が平行な用材に中心を引くとします。
まず横に向けて大体中心に近いところにトースカンに線を引きます。
続いて、トースカンはそのままで用材を反対に向けて同じように線を引きます。
すると2本の線の端からの長さが等しくなります。上の写真ではイとロの長さが等しくなります。
つまり、中心線を引くということは、この2本が中央で交わればよいということになりますので、交わるまで左右にひっくり返して、中心線をさぐればよいことになります。
上の写真のように彫っている途中のものであっても、平面部分を残しておけば先ほどと同じようにすることで中心線を引くことができます。
使い方3.見本に似せる
例えば、見本の鼻の下までの高さと自分が彫っているものの鼻の下までの高さを同じにしたいときは、見本と同じところに目印をつけるといいでしょう。
使い方4.図面に似せる
かなり高度になりますが、見本がなくとも下絵があれば、下絵と同じように線を引くことで同じように彫ることができます。
時には間違いを教えてくれる先生のように
私の教室では基礎として左右対称に彫ることを学んでいくのですが、1mm以下のずれとなったら、はじめのうちは見抜くことができず、左右対称になっているか判断するのはなかなか難しいです。教室で私が指摘して気づくというのもいいですが、家で彫る場合はそのようなわけにはいきません。そのようなときはトースカン先生の出番です。
トースカン先生で線を引いていくと、トースカン先生はずれを教えてくれます。どこに線を引くかは自分で考える必要がありますが、左右対称にする必要があるなら少なくとも中心線を引く必要はあるでしょう。
これを何回も繰り返していくと、眼が鍛えられ、ある程度のずれならトースカン先生なしでも見抜くことができるようになってくることでしょう。
ここでは左右対称を例に出しましたが、たくさんの場面でトースカン先生は助けとなってくれます。
Q&A
Q1.定規で線は引けばいいんじゃないんですか?
A1.角材の状態ですと、確かに定規でも引けます。ただ、彫刻刀で彫りこんだ状態ですと表面ががたがたで定規では正確な線を引けません。また、角材の状態であってもトースカンの方が早く正確に線を引けます。
Q2.お値段高いそうですが、おいくらですか?
A2.教室では定価4400円(税抜,2016/11/3現在)のものを扱っています。教室では割引販売してますので、生徒さんはご相談ください。かなり丈夫でよくできたものですので、ひとつあれば一生ものです。仏像彫刻だけでなく木彫をしている方なら、持っていて損はないと思います。