木のクセと付き合う

共通心得、心構え

新宅木材
新宅木材にて
彫刻をする際に用いる木は、数百年から数千年経ったものを主に用います。 この長生きした生命体を彫ることを考えると緊張します。いい加減なことはできないので、しっかり準備をした後に彫り始めます。一刀目は、さながら神聖な儀式のようなものです。 しかし、この木というものは、なかなかのクセモノでもあります。長年生きてきたという証をしっかり残しています。風雨にさらされたり、菌に犯されたりなどといった痕跡がしっかり残っており、これが彫刻を難しくします。色、堅さ、順目・逆目など性質が箇所によって異なりますので、それを意識しながら彫らなければなりません。そのためには経験が必要となります。ただ、小さい市販の角材を彫るときはそれほど問題にならないでしょう。あらかじめ、クセのある箇所を外して加工しているからです。木彫教室でもできる限りクセのないものを使ってます。 大きい角材では安定したものを入手するのは難しく、必ずと言っていいほど、このクセモノ問題にぶつかります。はじめはケンカのようなもので、ちっとも仲良くできません。しかし、次第に相手が分かってくると、なかなか面白いものです。 もちろんケンカ別れすることもあります。昔、出所の分からない謎の角材を入手したのですが、彫刻刀で彫っても彫っても、もろくて、くずれるようで全然きれいになりませんでした。あのときは自分の力が足らなかったのかもしれませんが。