木彫における彫刻刀仕上げとヤスリ仕上げの違い
生徒さんには木彫における仕上げの基本として、彫刻刀だけでピカピカにする方法をまずは実践してもらっています。彫刻刀だけで仕上げるというと、「ヤスリで研磨した方がきれいなのでは?」と思われる方がほとんどなので、今回はどのような違いがあるかを簡単に説明していきます。
彫刻刀でピカピカに彫る条件
①彫刻刀がきちんと研げている
彫刻刀は使っているうち切味が落ちてきますので、研いだ後にとりかかるのが理想です。
②順目(ならいめ)で彫る
以前、順目と逆目を感じるで書いた通り、木の目を感じながら彫る必要があります。
③薄手の手袋をつけて彫る
手の油などの汚れが木つかないようにするために薄手の手袋をつけて彫りましょう。ホームセンターでセット販売している安価なもので十分です。
彫刻刀仕上げとヤスリ仕上げの違い(木目の綺麗さ)
ヤスリには番手という細かさを表す番号があります。番号が大きいほど細かくなります。
今回はホームセンターで入手できた一番細かい番手#2000のペーパーヤスリと彫刻刀で彫ったときの違いを比べてみます。
上の画像、手に持ったひのきは、彫刻刀で彫ったものです。綺麗な木目が浮かび上がったことが分かると思います。
次に彫刻刀で彫ったところをペーパーヤスリ#2000で軽く研磨してみました。
木目が白くぼやけたことが分かると思います。
このように木目の綺麗さでいうと彫刻刀仕上げに分があります。実はこれは当然といえば当然です。彫刻刀は青棒という#20000程度(ヤスリの10倍)に相当する研磨剤で最後研いでいるのですから。
青棒で木も磨けば綺麗になるのではないかと思われるかもしれませんが、残念ながら木にねっとりした緑の汚れがつくだけです。
その他ピカピカにするメリットとしては、見た目のきれいさだけではなく、水をはじいたり、汚れの付着しにくくなったりといった効果を期待できるところにもあります。
彫刻刀仕上げとヤスリ仕上げの違い(かたちへの影響)
特に小さなものをヤスリ仕上げするときは、よっぽど丁寧にヤスリ掛けしない限りかたちに影響を与えます。
例えば、彫刻刀で角を立てるような彫り方をした場合、大雑把にヤスリ掛けををすると角が取れることは容易に想像できることでしょう。
仏像のお顔を彫刻刀で思ったとおりに彫れたとしても、ヤスリ仕上げでぼやけたお顔になったとしたら、劣化したとしかいいようがありません。
彫刻刀仕上げとヤスリ仕上げを使い分ける
作品に油や柿渋を塗ったり、彩色したりする場合は、ヤスリで仕上げでいい場合があるかもしれません。また、アクセサリーなど身につけるようなものの場合も角を取って、手触りが良く、衣服にひっかからないようにするためにヤスリ仕上げの方がよいかもしれません。要は使い分けなのです。