五感
五感とは
「五感」の意味を調べますと、以下のようにあります。
目・耳・舌・鼻・皮膚を通して生じる五つの感覚のこと。
五感を使うことはあまりに当たり前すぎて、自分の五感を意識して使っている方は多くありません。
それゆえ、「木彫の基礎技術の習得」の妨げになっていることがあります。
そこで、五感を意識して使うこともあるというニュアンスを入れるため、次のように「五感」を定義し直します。
目・耳・舌・鼻・皮膚を通して、目の前の現実から情報を引き出す力(ちから)のこと。
ホリビト辞書
人は、目・耳・舌・鼻・皮膚を通して、目の前の現実から情報を引き出し、それにより次の行為を選択します。それは木彫においても同様です。対象を観察し、一刀を木に入れたときに生じる抵抗、そのときの音を感じ、一刀が完了します。目、皮膚、耳から情報を引き出しています。
五感で情報を引き出せていない可能性
五感を使うことはあまりに当たり前すぎるがゆえ、五感で情報を引き出せていないことに気づかれない方もいます。この状態ですと、他の人が自分と全く異なる五感の用い方をしているかもしれないと想像できないでしょうし、違いを確認することもできないでしょう。
ただ、実際は「情報を引き出す力」には個人差があります。生まれ持った傾向や日常生活の中で培われたものですので、かなりクセのあるものです。
例ををあげるときりがありません。家族で同じ食事していても、いつもと味付けや具が違うとすぐに気づく者もいれば、何も気づかず食べるだけの者もいます。季節の花が咲こうが、虫が鳴こうが、満月が出ていようが、気づかない者もいます。
同じ場面にいても、自分が五感を通して経験している世界と他者が経験している世界は同じではないのです。
この他者との違いや、自分が五感で情報が引き出せていない可能性を理解したとき、本気で五感を意識して情報を引き出そうとすることもできます。
五感で情報を引き出す力を伸ばす
前回「観察することの重要性」で述べたことは目で情報を引き出すことの重要性についてでした。観察が上手くできると情報を引き出せ、次の一刀がきっちり決まってくるのでおかしなことになりにくいです。
ただ、木彫をはじめた当初は大概は観察が上手くできません。目には映っているけど情報が引き出せないのです。これはトレーニングで何とかしていくしかありません。自分がやろうとしたこととやった結果のずれを地道に埋めていくのです(参考:「習得過程を意識して冷静になる」)。
一瞬見て分からなくても、何度も瞬きしながら観察することで、ようやくわずかな変化(情報)に気づくことができるようになります。またその気づきを積み重ねていくと、前よりも情報を早く正確に引き出すことができるようになります。これは制作していく過程、教室でのやりとり、完成した作品を通じて実感を伴うことになるでしょう。
次なる世界へ
「木彫の基礎技術の習得」において、五感(特に視覚、触覚)を意識して使うことは大切です。感度を高めることにより、今まで感じ取れなかったものに気づけるようになります。
また、その力は木彫の枠を出て、日常の世界にも行き渡り、徐々に世界が変化して感じとれるようになることもあるでしょう。さて、どんな世界が待っているやら。
木彫やっていて楽しいのは作品をつくることより、そのような変化であったりする。