「とまどい」から「集中」へ
先日、教室でかなりやる気のある生徒さんから次ような質問を受けました。
「家で木彫の練習をする場合、①仕事の後に毎日1時間するか、②休日に8時間するか、どっちがいいですか?」
話を詳しく聞いていくと、①は仕事の後なので疲れている状態での1時間、②は実際にされているそうなのですがテレビを見ながらの8時間、とのことでした。
んー。何かが違う。私の答えは、頻度は問わないので集中した状態での数時間。
習い始めた後に感じる「とまどい」
木彫を習い始めると、多くの人はある種の「とまどい」を感じます。始める前は、小さい頃に鉛筆を刃物で削ることや、図工で版画を制作するなどしているので、自分にもある程度できるだろうと考えます(私がそうでした)。
しかし、いざやってみると、思った以上に上手くいきません。立体で少し複雑なものを彫ろうとするだけで、昔したこととは別レベルになってしまうのです。大概の方はここが木彫のスタート地点となります。
「とまどい」をどう解消するか
そう簡単にはいかないと分かると、大概の方は取り組み方が変わります。外から見ていても「集中している」と分かるような状態になります。簡単にはいかない問題に対して集中して取り組むことで解決しようと無意識になっているのかもしれません。しかし、一部の方は「そんなはずはない」と「あまり集中できず」、「とまどい」に支配されている状態になっています。そのような状態がずっと続く方は次のような結論を出します。「私には才能がない、向いていない」と。
私は才能があろうがなかろうが、やり方次第であるところまでは必ず行けると思っています。そこに行こうとするか、行くために「集中できるか」が鍵だと思っています。
集中の海に飛び込むと見えるもの
集中は意識をそこに集め、緊張とリラックスのバランスが良い状態。
私にとっては、海にダイヴするようなイメージです。深く潜れば潜るほど感覚が研ぎ澄まされて、瞬間瞬間に多くのことを深く感じることができるような気がします。
「集中が浅い」と多くのことを感じとれません。
自分が彫るためにしたことと、その結果どうなったかを明確には分かりません。
しかし、深く潜るともっと明確になります。
結果として、そこに因果関係があることが分かります。
もし彫っていて上手くいかなかったとき、集中していると、自分が彫るためにしたことが瞬間瞬間に見え原因を見つけることができます。
- 彫ろうとしている箇所
- 順目・逆目
- 右手左手各指の使い方、力
- 彫刻刀の角度、当て方
- 使用する彫刻刀
- 心理状態
- 体調・・・etc.
原因と思われるところを改善して再度チャレンジして、その結果どうなったかを再び観察します。一発で解決できないかもしれませんが、繰り返すことで、原因を絞り込み改善することができます。集中していないと、因果関係が分からないので改善できず、才能がない私が彫っているからとなってしまいます。
まずは観察から
集中することが苦手という方もいらっしゃるようですが、一つ一つ丁寧に観察するように彫っていくと集中に入りやすいかと思います。
この夏も暑くなりそうです。海へダイヴしましょうか。