独学で彫ることの難しさ

仏像彫刻心得、心構え

教本を買って、独学で家で彫っていた方がたまに教室に習いにいらっしゃいます。勉強家の方は自力で何とかしようまず考えるのかもしれません。 教本通りやっても上手くいかず教室に習いに来る方は良いのですが、挫折されて完全に止めてしまう方は少しもったいないなと思います。大概の人は「自分には能力がないからできないのだ」と考え止めてしまうのです。本を読んで、少しかじって、自分で自分の能力を判定するというのは無理があるように思います。 教本にも責任はあります。本によっては、「やさしく」、「かんたん」のような表現を使い、とっつきやすくしているものもありますが、これはちょっとまずいと思っています。せっかく興味をもって彫り始めて、上手くいかなかったら、どのような気分になるでしょう。「やさしく」、「かんたん」なのに、それができない自分。つらくないでしょうか。 感覚的なことを言語にすることには限界があり、初心者が本だけを頼りに上手く彫るのは正直難しいと私は思います。自分が何ができて、何ができないのかはっきり分からないまま適当に彫ると、手ごたえのないまま変なものができ、面白くないので気持ちが萎えてしまうのです。 私は生徒さんには、「やさしく」、「かんたん」とは言いません。始めは上手くいかないかもしれませんが、上達しながら彫り上げていきましょうと言っています。今の時代、結果をすぐに求める傾向にあるように思いますが、指導を受けて時間をかけて取り組まないとできないこともあるのです。それが分かる方が結局は長く続けておられるように思います。