彫り迷いを扱う技術
迷いは、何かが足りないから生まれるとは限らない。
かたちのイメージが立っていないこともある。
技術に、まだ確信が持てないこともある。
だが、それだけではない。
十分に考えているからこそ、簡単に決められなくなることもある。
迷いは、未熟さの印ではない。
関わろうとしている深さの表れでもある。
① 迷いを消そうとすると強くなる
多くの場合、人は迷いを「解消すべきもの」として扱う。
早く消したい。
はっきりさせたい。
白黒をつけたい。
だが、迷いは消そうとすればするほど強くなる。
なぜなら、迷いは「まだ決めていない」のではなく、
「決めきれないものを抱えている」状態だからだ。
② 迷いはすでに選び始めている証拠
迷っているとき、人はすでに何かを選び始めている。
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どの部分に時間や手間をかけるべきか
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どの部分はまだ触らずに丁寧に見守るべきか
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どこを一気に決めず、段階を踏むべきか
その直感が、迷いとして現れている。
③ 迷いを無くそうとしない
だから、迷いを無くそうとするのではなく、扱える形にする必要がある。
一気に決めない。
大きく動かない。
戻れなくなる選択は、いまはしない。
迷いを抱えたままでも、小さく手を動かすことはできる。
試す。
触れる。
確かめる。
その一手一手は、答えを出すためではない。
迷いの輪郭を、少しずつ確かめるためのものだ。
④ 迷いは変化する
そうしているうちに、迷いは消えないまま変質していく。
足を止める迷いから、動きを伴う迷いへ。
不安としての迷いから、選択を支える迷いへ。
迷っている自分を、未完成な存在として扱わなくていい。
迷いは、その人がどこに重さを感じているかを正直に示している。
結び
どう迷うかは、どう生きるかと、かなり近い。
迷いを排除しない。
急いで解決しない。
そのまま迷いを連れて進める形を探す。
それができるようになると、人は迷わなくなるわけではない。
迷いに、振り回されなくなる。









