内面のコンディションが乱れると、「基礎技術の習得プロセス」を歩むことが困難となることがあります。今回は、内面のコンディションの乱れ、原因、整えるためのヒントについて書いてみます。

内面のコンディションの乱れ

内面のコンディションの乱れを視覚的に単純化して説明していきます。

まずは、内面のコンディションが正常な状態です。目の前に彫る対象だけがあり、他に無駄なことを考えず落ち着いて集中できます。

そこに上手くできない問題が出てきたとしましょう。何でもいいのですが、彫れば彫るほど彫りあとが汚くなるとします。

上手くいかない問題が生じる

ここで、できない問題に集中して取り組めればよいのですが、平静さを失い感情的になり、退屈や不安、苛立ち、焦りが生じる場合があります。

平静さを失い感情的になる

さらに思考が乱れ、過去、未来が頭を駆け回ると、目の前のことに集中すること、今を生きることが困難になります

思考が乱れ、過去、未来が頭をよぎる

エネルギーは分散され、通常できるはずの観察もできなくなり、以前「観察することの重要性」で書いた”観察することを大切にされない方”の傾向に近づいていきます。

観察することを大切にされる方観察することを大切にされない方
特徴をつかんで彫っている山カンで彫っている
失敗してもすぐに気づく失敗しても気づかず、どうしようもない状態になって初めて気づく
同じ失敗をしない同じ失敗を繰り返す
自分のやっていることをしっかり認識できる適切なペースで彫っている自分のやっていることを認識できないほど早いペースで彫っている
上手くいかないところがあったらできるように努力する上手くいかないところがあったら勢いだけで乗り切ろうとする
作品を作る過程で迷い悩みながらもベストを尽くし、最終的な完成度が高いぐだぐだになり完成度が低い、未完成で終わる

乱れを生じさせているものは何か

乱れの原因としてありがちなものをいくつか記しておきます。

無理な目標

早くマスターしようとか、早く終わらそうとか、無理をしたときにコンディションが乱れる方を多く見てきました。目標ばかりに目がいくと、今に集中できなくなりがちです。

習慣

日常生活も含め、日頃の習慣は大きく影響していると思われます。例えば、実際忙しいのかもしれませんが、忙しい忙しいと頭の中までいつも忙しくしては、いざひとつのことに集中しようと思ってもなかなかできません。集中しているときは、落ち着いていますし、頭の中をセカセカと忙しくするのとは真逆です。そのために時間を確保したのであれば、今、目の前でやっていることに集中した方が楽しめますし、結果として効率もよいです。

無理な目標を立てることも習慣のひとつです。成果、成果と追い求めるあまり、肝心な今に集中できないとなると、成果も近づいてきません。

体調、病

体調により集中力が続かないことがあります。休憩をすれば回復するのか、回復しないのであれば、今できる範囲でできることをするというような冷静さが必要となってきます。ただ、すべて体調や持病でできないということになっては自暴自棄になってしまいますので、難しいことですが、まことに冷静な視点が必要となってきます。

内面のコンディションを整えるためのヒント

自分自身の観察者となる

余白(余裕)がなければ、何においても、真の力は発揮できません。上手くいかない問題について取り組むこともできませんし、アドバイスされても埋没してしまいます。

アドバイスがかき消される

自分自身で乱れに気づき、集中を取り戻さなければなりません。そのためには、自分自身の観察者となる必要があります。良い、悪いと判断せずコンディションをありのままに日常的に観察することができれば、感情や思考に巻き込まれず落ち着いて対処することもできます。

集中することを目標とする

作品完成といった目標を意識しすぎて今に集中できないのであれば、その目標への執着をいったん手放し、目の前のことに集中することを目標とした方が、作品完成へ早く近づきます。集中していれば、失敗したとしてもそこから学びがあります。まずは30分集中するといった、集中すること自体を目標とすることはシンプルでおすすめです。

有形、無形両方を大切にする

作品完成といった目標をどうしても意識してしまうのであれば、作品(有形)完成という目標と完成までのプロセスで得られるもの(無形)の両方を大切にすると心がけるのもよいかもしれません。

例えば、技術というのは適切なやり方でやれば身につきます。ただし、それなりに努力しないといけません。今に集中し、何度も観察しながらチャレンジしてやっと得た「技術」、やっとのことで乗り越えたときの「喜び」は無形のものです。さまざま経験をするうちに今までなかった「視点」、「感覚」を得ることも同様です。今に集中することでしか得られないものに気づいたとき、充実感がもたされます。またこの充実感がさらなる集中へと導きます。

 

先日、生徒さん同士で「自分で作ったとは思えない」と作品について話をされていましたが、瞬間瞬間でできることをやって乗り越えてきたので、そのように感じ、作品として結実したのだと思いました。